【フィレンツェ市の文化芸術政策に関する調査報告2012】

■フィレンツェ市の音楽施策について2012
■新市立歌劇場(Maggio Musicale Fiorentino)の施設概要、全体計画調査報告2012
■フィレンツェ市の音楽施策について2012

1.訪問先: フィレンツェ市役所文化部  COMUNUE DI FIRENZE

    Culutura、Turisimo e Sparut Lucia De Siervo :
             Direttore:部長
             2012/10/1  10:00~11:00
             フィレンツェ市文化部の建物

2.訪問者 伊達知見 (NPO法人日本アマチュア音楽家支援協会 代表理事)

3.質疑応答

1)フィレンツェ市文化部の音楽に対する基本的政策とは
フィレンツェにはMaggio Musicale Fiorentinoをはじめ、多くのコンセルバトーリオ(音楽学院)、アソシエーション、学校が存在します。 しかしながら、Maggio Musicaleの財政難を支援するのが最優先課題となり、その他の音楽団体への支援が完全に行き届いていないというのが現状です。

2) チケット収益だけでまかなえるのか。
テアトロ・コムナーレへの拠出金は年間350万ユーロ~400万ユーロ(3.5億円~4億円)です。ただし、フィレンツェ市だけの公的支援額だけで全体を 把握することは難しいです。なぜならば、チケット収益や市の支援以外にも、銀行、トスカーナ州、国(支援文化財・文化活動省)からの支援がある からです。またテアトロ・コムナーレは従業員をはじめ所属バレエ団、合唱団を抱えており運営コストが非常にかかります。市からの公的支援は ほとんどが人件費に当てられます。

3) 昨年の調査でテアトロ・ヴェルディが40%、テアトロ・コムナーレは15%の事業収益と伺ったが。
具体的にはMaggio Musicale側に聞かなければいけないが、市としてはだいたいそのような数字と把握しています。テアトロ・コムナーレの収入の正確な 数字は知りませんが、市以外の公的支援やその他スポンサーからの収益があることを考えると非常に高い収入があると考えられます。Maggio Musicaleは 法で認められた財団ですので、国、州などから支援が受けられます。

4)市の支援の近年の動向は?
2006年から実質的に安定していると言えます。例年300万ユーロ~350万ユーロ、今年は400万ユーロなので増加傾向にあります。

5)去年の震災時に日本にMaggio Musicaleが来ましたが。私も行く予定でしたがフィレンツェで足止めをくらいました。旧テアトロ・コムナーレおよび 新テアトロ・コムナーレはフィレンツェ市の所有です。工事はほぼ完了していて、このままうまく行けば政府からの最後の公的資金(数百万ユーロ)が入る 予定で、それで舞台セット全体を回転させる機械を導入します。これにより、例えばオペラとコンサートのセットを回転して入れ替えることができ、 同じ日に異なる演目が上演可能となります。

6)公的支援がなくなりチケット割引ができなくなったという話を伺ったが Maggio Musicaleに対する公的資金は強く増加しているので、その話は 正しくないと思います。チケット代が高くなったのは、制作費とのバランスが取れなかったという理由からではないでしょうか。 またその時の政策にもより、以前は職権としてチケット代は無料だったのが今は有料だったりします。

7)市民のコンセンサスについて
拠出金はもちろん市民の税金から賄われています。その他の拠出金はスポンサー寄付金やイベント(例えば日本公演など)ごとに寄付を募り個人が参加支援 することもできます。これらは規則があるるわけでも義務でもありません。

8)税金収入が減ると公的支援も減収する。どのように克服するのか。
チンクエ・ペル・ミッレ(納税者が確定申告時に所得税の0.5%の使い道をNPOなど指定された団体の中から選択できるシステム)で、Maggio Musicaleのコード を記入して指定できるようです。マイヤー子供病院などキャンペーンを徹底している団体は周知であるが、Maggio Musicaleのように説明の足りない団体は 選択できることも知らない市民もいます。(Maggio Musicaleの寄付形態についての記述を印刷してもらう)

9)フィレンツェ市とテアトロ・コムナーレの関係について。市はどの程度干渉するのか。
Maggio Musicale Fiorentino財団の理事長はフィレンツェ市長です。文化部長の私が文化的政策ラインに関する干渉が職権上可能なように、フィレンツェ 市長が職権をもって干渉しようと思えばできることです。しかしそのようなことは行なっていません。

10)オペラやクラッシック以外の支援は?
なるべくいろいろなジャンルの音楽を支援できるように、ジャズやポップ、オリエンタルミュージックなど、年または2年単位で公的資金を幅広く行き渡る ようにしています。

11)日本にアドバイスを。
ほとんどすべての団体が市からの支援に頼りきっている傾向がありますが、市はすべてをサポートすることは不可能です。そのためには各団体が良い プロジェクトを考えること。例えばMaggio Musicaleは学校で子供達にオペラについてわかりやすく説明し、本物のオペラに参加する機会を設けています。 そして子供が自然な形で親と一緒にオペラ鑑賞に親しめる環境作りに努めています。私の意見としては、このように家族を結びつけるようなプログラムを 考えることがひとつの解決策ではないかと考えます。

          

【新市立歌劇場の施設概要と全体計画(Maggio Musicale Fiorentino)2012】

3.訪問先 新フィレンツェ市立歌劇場   TEATORO DEL MAGGIO
                     MUSICALE FIORENTINO
                     市立歌劇場 広報担当
                     HEAD OF MEDIA
                     Francesca Zardini
                     2012/10/5 10:00~12:00

          

1)新歌劇場の施設概要
・フィレンツェ市の中心から2Km程度離れたカシーネ公園の隣接地
・客席数1600席の歌劇場と野外劇場(屋上)
・別棟に事務室、練習場など歌劇場の関連施設を予定(未着工)
・舞台機構についても未着手のため、まだオペラ公演は出来ない状況。
・市民利用の集会場、ジョギング、ヨガなどの練習場、カフェも併設予定

2)全体計画
・歌劇場の屋上に野外劇場配置して、アンプを使ったPOPなどジャンルや様々なパフォーマンスに対応した劇場を計画
・屋上石庭はピッティ宮殿内ボーボリ公園の「石の迷宮」「緑の回廊」のイメージを取り入れた計画
・周辺公園(カシーネ公園)と連携、幅広い市民利用施設を併設し、周辺のまちづくりと一体となったコンセプトを持った全体計画となっている。
・屋上からはフィレンツェの美しい街並みを見渡せて、市民の自慢となっている。
・モダンな建築については、市民から、フィレンツェの建築としてマッチしていないとか、街にとっては何かおもしろい、現代風の建築も必要とか賛否両論がある。

3)事業費
・フィレンツェ市の財源と国からの補助金
・舞台機構の整備43億円は国から補助金で整備、来年から着手予定
・資金調達、執行管理が不明確
・このため全体計画の実現性が不確実

4)公演への影響
・今年4月からの年間チケットが販売された。
・資金調達難から、舞台機構の整備が間に合わず、新歌劇場でのオペラ公演は見送られて、管弦楽は新歌劇場、オペラは旧歌劇場とすみ分けの予定だった。 旧歌劇場のアスベト問題が発覚して使用できなくなり、演目の変更を余儀なくされた。
・チケットの払戻しはなく、オペラ公演ができず、ピアノと歌手だけによる演目に変更された。
・今年、フィレンツェのオペラ公演はゼロ。
・イタリア全体で、5,6年前に比べて公演数が半減
・ 音楽家の質低下、同じ演目、同じ演出に使いまわしが目立つ(ある音楽ファンの声)。

5)若手(40歳)の新フィレンツェ市長(Mattero Renzi)による改革の効果?
・マネジメント能力に欠ける高い給料のトップと一般職員との格差
・文化芸術分野における既得権益への対応が鍵
・楽団員への給料未払い、ギャラの安いソリスト、指揮者の採用など、財団の運営上の課題も顕在化

  

2012/10/17  NPO法人日本アマチュア音楽家支援協会  代表理事 伊達知見
                                   以上

                                  目次に戻る