ベルディ劇場における危機管理に関する調査報告2016

 ■訪問先 Teatro Verdi di Firenze (テアトロ・ヴェルディ)
 ■対応者 Direttore Generale MARCO PARRI ベルディ財団理事長
 ■訪問日 2016年11月17日
 ■訪問者 伊達知見(NPO法人日本アマチュア音楽家支援協会代表理事)

1)劇場の防災に関する考え方
・施設面 : 法に基づき、電気設備、水道設備等の他、消防、関係機関の定期的なチェックを受けている。
・スタッフ研修面 ; 劇場としては安全委員会(6人)、スタッフによる安全対策研修がある。理論と実践を実施している。委員会は危険防止を検討してきた。
・防災については消防当局が担当している。防災(点検、防火研修)は3年に1回実施している。

2)施設の対応策
・劇場内はいくつもの防火区画が設置してある(延焼防止)。非常灯は第1次、第2次の2段階の対応を図っている。
・避難は東南側1階から道路(Via Verdi)に直接退出できる構造になっている。
・2階以上は階段を利用して1階まで避難してもらう。

3)劇場の耐震対策(耐震診断、耐震工事)の予定、実施状況
・天井の補強を実施した。雪対策も実施した。
・フィレンツェは歴史的建造物が多いのでまだ具体的にない。将来的には必要と考えている。
・建物の耐震対策は防災所管の役所(名称Protezione Civile : 英語でCivil Protection、国の防災局、市民保護局のこと)が対応している。

4)スタッフの教育、訓練
・教育、防火、救命救急の研修など役割分担ごとにコース別に実施している。
・救命救急は毎年実施(AEDを含む)
・防災責任者は年間6時間コースの研修を実施
・訓練の実施場所は内容により、消防当局(防火研修)か劇場に分かれる。
・公演時のスタッフは総勢20人(技術)になる。夏は休場しているのでスタッフは3人のみ。
・避難先は決まっている。

5)リスクマネジメントの取り組み
・具体的には対応していないが、大きな荷物はホール内持ち込みを禁止して預かるとか、館内の不審物チェックは日常的に実施している。
・先日、ニューヨークのメトロポリタンオペラハウスに行ったが、大きな荷物の持込み禁止や館内チェックは同じ対応であった。カーネギーも同じです。
・情報収集は警察に対応になる。
・現時点では荷物チェック、金属探知機の使用の予定はない。
・イタリアはまだ安全だ。
・したがって、リスク管理に関するマニュアルはまだない。

■所見
冒頭に「何か起きたら神様にお任せするしかない」と冗談を言っていって笑わせてくれたが、防災に対する検討委員会を設置して関係機関も入って検討している。 スタッスについても役割分担を決めて研修や訓練を実施するなど、対応を図っている。また、関係法に基づく定期的なチェックを実施していることが分かった。
パリのバタクラン劇場でテロリストにより悲惨な事件が発生して一年になります。イタリアのテレビでも追悼のニュースが流れています。いつどこで再びテロリスト のターゲットになるかも知れない。その可能性は否定できない。劇場関係者にとってはお客様に安全・安心で楽しんで頂くために、具体にどこまでのリスクを想定 して対応すべきか、過剰な反応は控えつつも一種のジレンマがある。こうした中で、不審物の点検や荷物持ち込みへの対応、館内の清掃などのスタッフ全員が意識 をもって日常の対応の徹底が何よりも大切であることが、今回のインタビューにおいても共有化できたことが成果だった。さらに消防や警察当局と日頃からコンタクト をとっていくことも重要であることが改めて分かった。Teatro Verdiでは公演開場時にはホールホワイエに制服姿の消防スタッフが2名待機していた。ややものもの しく見えるが、様々な意味で抑止効果はあると思った。
この8月から中部イタリアではM6級の地震が頻発している。既に耐震補強してあった建物やインフラの被害は少なかったと伝えられている。歴史的建造物が多いから という理由から劇場の耐震対策の遅れが懸念される。我が国でも施設の更新時期を迎える施設やインフラが増大している。待ったなしの対応が求められるが、先立つ 予算の確保が共通の課題といえる。劇場関係者にとって、劇場とはソフトの公演とそれを支えるハードの施設(安全・安心を含め)の両輪で成立するものであること を忘れてはいけない。  以上

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