テーマB-05 | 『日産自動車㈱繊維機械事業部』(織機)FAコントローラー &『ソニー㈱』(CELL方式組立ロボット【CAST】) |
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著者: NPOインテリジェンス研究所 理事 河野 通之 | 私のプロファイル |
FAシステムへの興味
私の合流は米国サウスカロライナ州にある織物製造販売の最大手「M社」を訪問したことに始まる。
私が勤める商社兼メーカーである株式会社ミクロン機器(現デバイス販売テクノ㈱)の主な製造品販売先は、日産自動車㈱
繊維機械事業部である。今回、同社と共同開発した世界初の8ビットマイコン付ウォータージェットルームコントローラー1440台を
M社向けに出荷した。納入状況チェックを含めた視察に、私は同行するチャンスを得た。私にとって今後取り組むテーマ探しも
兼ねていた。機織り機のイメージはあったが実際に見るのは初めてだった。見るもの全て私にとって新鮮であり、驚きの連続
だった。ZD1440( WJETLoom1440台をZero Deffectで納入する意)のワッペンを付けて回った。
私が最初に訪問した工場はこれから新規の設置するために整理中ではあったが、残された既存のシャトル方式機械が甲高い
うるさい音「カン・カン・カン・・」を上げながら織っていた。これが伝統的なシャトルを使った織機と理解できた。
次に500台の新機の入った工場に着いた。玄関を入るとすぐに透明なガラスの向こうに500台の機械か並んでいる。
先ほどの工場の騒がしい音に比べてほとんど何も聞こえない。驚きだ。セミが鳴いているようないやもっと静かで速い音だ。
ガラスの向こうに入っても静けさはあまり変わらない。500台並ぶとこれは壮観だ。一秒間に10回位
織り込んでいるのに。「シャン、シャン、シャン・・・・と」。よく見ると、織ったものを搭載した台車が検査のために次の工程に自動で
運ばれてゆく。表示機のランプの赤い部分が点燈して機械は止まっていて人が付いて復旧作業をしている。他に人は見当たら
ない。勿論準備工程、検査工程などは人に頼っている。織っているものは水に強い合成繊維だ。PETかナイロンだったろう。
これらの工場の機械の稼働状況、準備状況、検査状況など織布に関わる状況管理は、1台のDecのFAコンピューターが行って
いる。織機に入っているマイコンピューターは、その機械のコントロール状況と稼働状況管理をコンピューター等を常に送っているの
だろう。一番大事な情報は、自分のシフトの間で何ピック良いものが織れたかとのこと。ピック数でPAYが決まるようだ。日本の
月賃金体系とは違う。FAコンピューターから本社の大型コンピューターへ生産の情報が流れ、会社全体の収益計算、販売管理、
売上、生産状況、発注管理、新製品、デザイン管理などに使用されている。ほぼリアルタイムの管理システムが世界ネットの中で
動いている訳であるが、我が社のスケールで扱うにはあまりに立派すぎるシステムだと感じた。特に興味を持ったのは、工場の
現場の機械は、特に織機おいて織れば織るほど条件変更などのフィードバックでいい織布が出来るとのこと。このFAシステム、
特に通信システムには大変興味をもった。(参照写真①、②)
FA機器
米国でのFAシステムを見たこともあって、FAへの関心は強くなっていった。日本の市場をさらに調査した結果、生産場所などに
使われるモーター利用による位置決め機器の需要が増えると見込まれた。しかし現状は、使いやすい機器が少ないと感じた。
そして弊社の力でもやっていけるのではと考えた。但し、市場が受け入れてくれる商品開発には技術のある人が不可欠だ。
そこで以前からアプローチしていたこれまたテニスの先輩である永易功氏の獲得に動いた。そして、田村博冶氏はじめ技術部隊
でFA事業部を組織し、MFC1000、2000、3000、4000、など2年間の間に簡易FAコントローラー4機種を立ち上げた。
(写真③参照)モーターコントロール機能は、2軸制御(オープン、クローズ方式)、シーケンス機能 IN、OUT(計40点)、そして
プログラム方法は、ベーシック言語(プログラムがしやすい)の8マルチタスク(応答が早い)を採用した。エンコーダーフィード
バック式はCPUを2個搭載しソフトウェアサーボ制御の最先端機能をもっていて外部負荷変動にも対応していたので、素早く、
柔らかく、精度の高い制御ができた。永易氏のソフトウェアサーボ制御数式能力の賜物だった。ロード、アンロードなど早く、
柔らかく部品などのワークを掴み、動かしそして位置決めして置く必要がある。工場現場のエンジニアなど生産技術の専門家
からは大変高い評価を受けた。大手のアセンブリメーカーは当然自分の競争力を高めようと、自前の機械をつろうとしているのが
感じられ、サンプルを出荷するにも躊躇することもあった。分析禁止の項なども入れたが効果は無かったと思う。ビジネスには
苦労した。アクチェーターメーカーなどへOEMなどを狙ったがなかなか思うようにはいかなかった。ただ、価格の安いMFC2000
は人気があった。しかし、簡易であるという長所はありながらOSのバージョンが変わるたびに入力プログラムをサポートしないと
いけないのにはいささか手を焼いた。
CAST(SONY)
SONY TV事業部のM氏からMFC2000のデモの依頼があった。早速大崎の資材部の集合応接場でデモを行った。周りの人
たちは奇異な目で見ていたが、ご本人は大真面目。早速、この大きさで簡易な、スライダーでモーター2軸直交ドライブできる
コントローラーボックスの試作見積もり依頼があった。受注し、特急で試作品を持ち込んだら、すぐ次の試作の為に呼ばれた。
M氏曰く『12色の違う色で試作品を急ぎ作ってくれ』と言われる。『何のために?』と聞くとやっと答えてくれた。工場の女性パート
の人たちに好みを確認したいといわれる』。『メインライン用ではなく、サブライン用に考えていて専門知識のないパートの方でも
来たその日から100%稼働できる』ことを可能にしたい。つまり対象物をセットして目の前のボタンをたたくと自動的にねじ締めが
行われ一定時間で作業が終了し取り上げる。これを繰り返すだけだ。需給変動しても対応できるように』ということのようだ。
SONYではFA事業が発足し、量産をしたいとの話になってきて既存のものでは大きさ、機能の点、価格に、課題が出てきた。
門型の上部も型を作るとのこと。我が社でも性能、大きさ、価格面上やり直ししないといけなくなった。結局心臓部はASIC
( application specific integrated circuit、特定用途向け集積回路)を製作することにした。我が社クラスにとってはかなりの投資で
あり冒険でもあった。勿論貴重な情報ノウハウを隠すことを念頭においていたが。量産品は門型のミシンのようなイメージで
(写真 ④ 参照)3軸目にねじ締め、ディスペンサー、半田づけ等のユニットが取り付けられことができちょうどSONYの
ウオークマンなどの小型製品などの生産にも活躍した。外部には弊社の名前こそ出なかったがあのSONYが商品化してくれたと
皆で乾杯し祝った。単機能ながら組み合わせ可能でライン変更なども簡単なので、セル方式の生産方式にもマッッチングしたのか
この方式は今も使われているようだ。
まとめ
1.布は、人類にとって無くてはならないものではあるが、中国など他国との国際競争に勝っていかなくてはならない。事業者は、
機械、材料、システム、デザイン、ファッションなども含め、上流から下流までのあらゆることを理解し多方面の人とも情報交換
したうえで、他社には真似できない自分たちの特徴をだしていかなければならない。言葉で言うのは簡単だがやはり「集中と選択」
を継続行い続けることだ。写真①、②を提供いただいた「丸井織物G」は、まさに日本が世界に誇れる企業の一つで、若い社員の
意見を取り入れ、活かしながら未来に向かって果敢に攻めている会社の見本だ。同社のホームページなどご覧いただきたい。
2.ロボットの世界においては、自動車用の塗装、溶接、搬送、など、日本は世界をリードする立場にあるが、写真④の提供を
いただいた(蛇の目ミシン工業㈱)に見られるCELL方式用自動機ユニットが面白いと思う。商品にはライフサイクルクルが必ず
あるが、需要の変動の多い中で不可欠のシステムユニット商品が改良を加えられ販売され続けているところを見るにつけ、
同じ思いであった筆者にとってこんなうれしいことはない。ウェラブル機器など、小型のユニット商品が増加する自動車などの
自動運転用のカメラ、表示機などの商品も、多様化されてきている。新興国における生産においても品質安定も含めて気が
利いた補助自動機の需要は今後とも増えるだろう。
参考資料
①中部発きらり企業 Vol.87 http://www.chubu.meti.go.jp/koho/kigyo/vol87monodukuri.htm
②丸井織物株式会社 http://www.maruig.co.jp/
③蛇の目ミシン工業株式会社 http://www.janome.co.jp/industrial.html